最近のららぽーと豊洲の中のレストランとか、週末の夜は、座席は空いてるのに店員の手が回らないから、お客を入れられず、でも店の前には、長蛇の列。みたいのをよく見るんだけど、時給1300円くらいに上げてもいいから人雇えばいいのに?と外食ビジネスの素人ながら思うのですが間違ってますかね?
— 田端信太郎 @田端大学塾長である! (@tabbata) November 4, 2019
これ、東京もそうだけど大阪でも同じようなことを見る。一番多いのは飲食店、その次に多いのは小売かな。お客さんがいるけれども店員さんが少ないために、なかなかレジがさばけないっていう現象。サイゼリヤなんてホール1人か2人で回してて、ギリギリうまくやってるなーって思った。
仮に田端さんの言うように時給を少し高くしたとして、アルバイトが集まるか?っていうと、集まらないだろう。実際に会社で採用をしていたこともあるし、採用支援をすることもあるので肌感覚で1300円では集まらないと思う。というか、時給をたとえ上げたとしても集まらないだろう。
その理由は「働き方の多様さ」「職業の格が低い」という2つの理由があるのではないだろうか。
日雇い派遣が禁止され働き方が狭まる
まずひとつ目の理由、「働き方の多様さ」という点では日雇い派遣の禁止が一つの理由に挙げられる。日雇い派遣は2012年(平成24年)に原則禁止された。リクルートワークス研究所によると、2008年時点で日雇い派遣で働いている人たちの人数は9.3万人だったという(参考) 。2012年に日雇い派遣が原則禁止されてから、パート・アルバイトの数は80万人以上増えているので、ほとんどがパート・アルバイトに吸収されたことになる。(参考)。
日雇い派遣のいいところは空いている時間にパッと働くことができる柔軟性だった。もちろんパート・アルバイトでもできなくはないが、直接雇用ということもあり人情の入り込む余地が大きい。そのため、好きなときだけ働くのではなく、みんなで助け合ってシフトを組む、ということにも参加しなければならないだろう。
日雇い派遣の禁止が現場を苦しめているという可能性は高いだろう。
多様な働き方を望む人が増えている
さらに労働力調査によると、非正規雇用を選んだ理由として「自分の都合の良い時間に働きたいから」という人が右肩上がりで増えている。日雇い派遣の原則禁止の翌年、2013年から2018年の5年間で男性は50万人以上、女性は100万人以上増えている。一方で「正規の職員・従業員の仕事がないから」という男性は右肩下がりで約40万人減少している。
元々日雇い派遣の禁止は、年越し派遣村騒動を始め派遣という働き方が狙い撃ちされて規制が強化された。日雇いを禁止すれば正社員が増える、そういう狙いだったのだろうが、残念ながら正社員は増えなかった。それどころか自分の都合が良い時に働く、自由な働き方を希望する人が男女ともにどんどん増えている。トレンドとは真逆の政策が実行されてしまったわけだ。
自分の都合の良い時に働くという意味では、ウーバーイーツが非常に象徴的だ。ウーバーイーツの登録配達員数はどのくらいかは不明だが、都心部でよく自転車を漕いでいる人たちを見かけるようになった。ウーバーイーツの配達員は自分の都合が良い時に働くことができる、まさに多くの非正規雇用が希望している働き方と言える。
ある意味、ウーバーイーツはこの非正規雇用で働く人達のトレンドを捉えたといえるだろう。ここまで自由な働き方は今のところ、日本の他の業界では通用しないため、ウーバーイーツに人が集まっているのだろう。
給料が低いのにホワイトカラーの事務を求める理由は?
もう一つ、給料を上げても人が来ない、給料が低くても人が来るという理由の一つの事務職への過剰な就職希望数が挙げられる。下記は過去の記事で、東京のハローワークの数値をまとめたものだ。事務職の給与があまり高くないにも関わらず、有効求人倍率が0.55倍になっている。つまり1つの求人におよそ2人が応募しているという状況だ。
本来、給料が高ければ応募が増えると田端さんを始め多くの人が考えているが、実はそうではない。給与が高くないとしても、事務職は多くの応募があるのだ。
私が思うに、これこそ「職業の格」ではないかと思う。事務職は格が高く、警備員やサービス業などの職業は格が低いと多くの人が思っているのではなかろうか。職業に貴賤はないというが、裏返せば多くの人が職業に貴賎があると考えているからこそ、このような言葉が生まれているのだろう。
職業としての格が上がらない限り、給与を上げても応募は増えてこないだろう。
キャバ嬢・AV女優が今や人気職種に
逆に昔に比べて職業の格が上がった職種もある。
例えばキャバ嬢は非常に格が上がった。昔はナイトワークはあまり良いイメージがなかったが、漫画・ドラマなどでキャバ嬢を扱う作品が増えた。そしてキャバ嬢がなりたい職業ランキングに入る、なんて言う話もあったくらいキャバ嬢は女性のなりたい職業になっている。
さらにAV女優も非常に格が上がった。きれいな方が多くなった、ということもあるだろうが、紗倉まなさんが執筆活動やコメンテーターをするなど幅広い活躍をしたり、明日花キララさんの生き方に憧れたりするようになった。中国で人気になった蒼井そらさんのように、グローバルに活躍する姿も格を上げる一つの要因になっただろう。
キャバ嬢にしてもAV女優にしても、高収入というのも大きな要因だとは思う。ただ、今までは高収入とは言え、キャバ嬢になる人は限られていたし、AV女優になる人は少なかった。芸能人もキャバ嬢だった過去を隠していたのが当たり前だが、今ではAKBのメンバーで「昔キャバクラで働いていた」と話すタレントもいたりする。
高収入という面もあるが、それ以上に格が上がったことが多くの女性が働くようになった理由の一つといえるだろう。
お笑い芸人は稼げなくてもなりたい職業
給与が低くても応募が多いという意味ではお笑い芸人も同じだ。お笑い芸人は下積みをして、アルバイトをしながら生活しなければならない。舞台も最初は500円しかもらえないなど、テレビでお笑い芸人が話している。そして成功できるのも一握りだということも。
にもかかわらずNSCには1000人近い人が入学してくるそうだ。元お笑い芸人の方が書かれているブログでは600人の入学者がいたそうだ。東京600人、大阪400人で約1000人が入学してくるとのこと。あれだけテレビで売れている人たちが苦しかった過去を話しているのに、それでも入ってくるのだ。
どんなに給料が低くてもなりたいという人はいるのだ。
職業の格を上げ、自由な働き方を担保せよ
いくつか統計や事例を上げてきたが、結局のところ給与を上げるだけでは人手不足は解決できない。これは確実だ。
ではどうすれば人手不足が解決できるか?それは職業の格を上げて、自由な働き方ができるようになればいいのだ。飲食店やサービス業の職業の格があがり、働き方がウーバーイーツのように空いた時間でも働けるようになれば、応募も増えるだろう。もちろんどちらかだけでもいい。
給与を高くする以外の方法を採用に取り入れる事、これがポイントだろう。