ナイスミドルになりたい~松本孝行のブログ~

教育とか雇用とかの社会問題、後は趣味のマンガを中心にしたテーマで書いてます。アゴラや自社サイトにかけないだろうなーっていう話題がメインです。

なぜ企業は新卒採用を抑制し、氷河期世代を生み出してしまったのか?

上記は新卒採用でもなかなか就職ができなかった、就職氷河期と言われる時代の話題だ。新卒求人倍率が1998年には0.9と、就職を目指している大卒の1割は就職できないほど、就職が難しかったのだ。だからこの時期は有名大学卒でも、今ではあまり人気のない職種に就職することも多かった。

そして就職することが出来ずに非正規雇用、アルバイト・パートで食いつないでいき、アラフォーになったときに、正社員としての経験がなく、キャリアを構築できずにいる人が多く生まれた、とされる。

企業が新卒採用を抑制した理由

中嶋さんが不景気になってなんで採用を絞ってるんだ、と苦言を呈している。確かに、なぜ氷河期の際にはこぞって多くの起業が採用を抑制したのだろうか?

その理由は企業がどういうふうに運営されていたか?もっと言えば企業の資金について考えるとわかるだろう。

日本は世界でも間接投資が多いと言われている。間接投資というのはつまり融資・借金のことだ。銀行から資金調達して、それを企業運営に当てる。商品を製造して販売し、お金を回収するまでの間を銀行からの資金でつなぐ。つまり銀行が貸出をストップすると、一気に企業が回らなくなるのだ。

ちょうど1998年に新卒求人倍率が最低を記録したが、1997年11月には山一證券が倒産するということが起こった。つまり金融危機がこの時期にちょうど起こったわけだ。山一證券は倒産したが、他の金融機関はどのような行動をとったか?

それが貸しはがし・貸し渋りだ。これが就職氷河期を生み出した直接の原因といえる

「日本における貸し渋り」を書かれた東京大学大学院経済学研究科・教授の福田 慎一さんがまとめたレポートによると、全国銀行貸出増加量のグラフではバブル崩壊後の1991年以降、一気に貸出が減っている。そして1999年から更に貸出を減らしているのがグラフを見てもらえればわかるだろう。

日本における貸し渋り

これが不景気になったときに採用を絞らざるをえなかった理由だ。採用したとしても、その給与を払うことが出来なかったわけだ。

内部留保を積み上げるのはダメなことか?

銀行融資をメインに企業の資金繰りを回していた時代と違い、今は内部留保を多く積み上げている。共産党などは「内部留保を溜め込んで、従業員に還元していないのはダメだ!」というが、企業経営者からすればこれは当然だ。バブルを経験した大企業ほど資金繰りを悪化させないために内部留保を貯めようとするだろう。

困ったときに銀行が貸出をしてくれるのであればいいが、残念ながら銀行は貸してはくれない。「不景気のときこそチャンス!たくさん優秀な人を採用したいから融資してくれ!」と言っても貸してくれないだろう。それをバブル崩壊後に経験しているからこそ、企業は内部留保を貯めている。

以前よりも現金を多く貯め込むようになったため、今は不景気になったときに一気に新卒採用を絞るようなことは大企業はやらないだろう。中小企業はそもそも採用も少ないし、不景気になれば潰れるしかないので、不景気になれば採用どころの話ではなくなる。結果として全体の新卒採用は厳しくなるが、バブル崩壊後の氷河期ほどにはならないのではなかろうか。

1980-2012年度における日本企業の財務構造の変遷というレポートを見ても、銀行からの借り入れを1998年あたりから減らしているのがわかるだろう。今はかなり健全な融資を行っているのではなかろうか。

1980-2012年度における日本企業の財務構造の変遷1

就職氷河期は再び起こりうるのか?

というわけで氷河期世代を生み出したのは下記の通りの理由だ

  • 日本企業の資金繰りが間接投資メインのため
  • 銀行が貸し渋り・貸しはがしを行ったため

では日本では今後、就職氷河期が再び起こるだろうか?おそらく、以前の就職氷河期のようにはならないだろう。企業の資金調達方法も多様化しているし、銀行に頼らない資金調達も増えてきた。更に非正規社員が雇用者の50%弱になっているので、不景気になった際に先に非正規社員を犠牲にすれば、新卒社員をある程度確保できるのではなかろうか。

とはいえ、日本が今後インフレになることは避けられない。その場合は全国的に、そして世界的に不景気になるだろう。結局のところ、景気の変動は現代人には避けられないのだから、不景気があるということを前提としたキャリア形成を行うのがベターナノではないかと思う。