日本は素晴らしい国だなと感じるのは川上さんのような個性が認められるという点だ。横並びだとか和をもって貴しとなすとか、日本は出る杭を叩く傾向があると言われている。しかし川上さんは出る杭でありながら、成功することもできたし、こうやって興味深く話を聞く人も多くいるのだ。
これは発売日が2014年となっているように、だいぶ前の本である。今はビリビリ動画というのが中国で誕生し、これがアメリカNASDAQに上場した。
川上さんの考え方は許されるのか?
ビリビリ動画は世界に羽ばたいたが、その大本となるニコニコ動画はローカルのサービスのままだ。この本では川上さんの考え方の端緒に触れることができるが、大きくしていこうとか、ニコニコ動画を世界に広めていこうとか、そういう考え方はほとんどみられない。
今一番したいのは寝ることだと言ったり、誰もが反対することをやってみたりと、いわゆる世界的な経営者とはスタンスがだいぶ違う。そのためか、やまもといちろうさんのような投資家からは下記のような苦言を呈されていたりする。
ビリビリのNASDAQ上場が話題になってるけど、ニコニコ動画こそ上場して資金調達して世界市場で勝負するべきだったのが、川上量生さん以下経営陣に構想力がまるでなくイベントや人工知能のような趣味に傾斜していった結果が現在のオワコン扱いであることは真摯に反省するべき。
— 山本一郎(やまもといちろう@告知用) (@kirik) 2018年3月29日
確かにアメリカであれば、川上さんのように成功した人であれば、もっとニーズに答えたサービスを作るとか、イーロン・マスクのように壮大なビジョンを示したりするのだろう。アメリカ社会として、経営者としてより成長すること、新しいサービスをどんどん出すことを求められているように感じる。
しかし川上さんは日本で上場はしたものの、いわゆる拡大路線には進もうとしているようにはこの本では見えなかった。投資家からすると、企業を成長させない経営者はダメだと烙印を押すのかもしれないが、事業家・企業家としてみると川上さんは結構憧れるというか、好き勝手できるのはいいなぁと感じる人は多いのではなかろうか。
川上さんのような事業家・経営者を認めるかどうかというのは一つのポイントのような気がする。私としてはこういう経営者がいても面白いと思う。ただ、企業となると少し話は変わってくる。ニコニコ動画は利用者数がどんどん減っているようだし、このまま減り続ければ企業として存続できなくなってしまう。
であれば、好きなことをするのは自分で別に企業を立ち上げて行う方がいいのかもしれない。