
バーテンダー コミック 全21巻 完結セット (ジャンプコミックスデラックス)
- 作者: 長友健篩
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/02/29
- メディア: コミック
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私の好きな漫画の一つ、バーテンダーがある。幾つかシリーズがあって、一番最初のシリーズが好き。このバーテンダーを読むと、いろんなうんちくを知ることができる。お酒やカクテルがどういうものなのか、どうしてできたのか、歴史はどうなっているのか…。
その一つにウイスキーの話が出てくる。スコッチウイスキーは今ではシングルモルトも人気になっていて愛飲者も多くいるし、何と言っても日本ではサントリーの努力によってハイボールがビールと並ぶ定番アルコールに昇格している。
高い税金から逃れるために作られたウイスキー
もともとウイスキーが生まれた頃はウォッカやジンなどと同じ、蒸留酒だったとされている。色は無色透明、香りなどもない単純なアルコールだったようだ。それがちょっとしたきっかけで樽に詰めて置いておいたら、なんと不思議なことに琥珀色になって良い香りもついた。
偶然が重なってできたウイスキーなのだが、その一つに高い税金がある。ウイスキーを作る際に必要な麦芽に対し、税金をかけたのだ。それもかなり高額な税金をかけた。それによって多くのウイスキー製造者は怒り、「じゃあ麦芽を使わないものを作ろうぜ!」として作られたのがグレーンウイスキーだとされている。
そしてこのモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせたものがブレンデットウイスキーだ。モルトウイスキーの持つ味や香りなどの長所とグレーンウイスキーが持つ当時のコスト・税の安さ、この両方いいとこ取りをしたのが、今や一番飲まれているブレンデットウイスキーというわけだ。
実は昔からなんだかんだと国は税金をかけてきて、税金から逃れるために新しいものを生み出そうと一般市民はしてきたということだ。まさに上に政策あれば下に対策あり、という中国のことわざは世界中の人間が考えていることでもある。
発泡酒・第三のビールという「抵抗の酒」
ウイスキーはこうした歴史から「抵抗の酒」なんて言われていたりする。重税などから逃れるため、市民が権力者に抵抗してできたものだというわけだ。
日本にも抵抗の酒はある。それが発泡酒・第三のビールだ。この2つは日本の重いビールへの課税に対抗し、より安い値段でビールのような飲料を楽しんでもらおうと考えられたものだ。ビール350ml当たり77円が酒税だ。アサヒ スーパードライ 350ml缶×24本がアマゾンで見ると、1本あたり198円程度になるので、約39%が酒税というわけだ。これに消費税も乗ってくるのだから、馬鹿馬鹿しい話ったらありゃしない。
ビールよりも税金の安い発泡酒は同じ350mlで47円、第三のビールは28円となっているそうだ。税金が安いために、安く楽しめる発泡酒・第三のビールは日本の税金を真正面から捉えて対抗してきた、まさに「抵抗の酒」と言える代物ではなかろうか。
権利主張・抗議・対抗のやり方は様々
別にアサヒやキリンが国に対して真っ向から抵抗するために発泡酒や第三のビールを作ったわけではないだろう。しかし顧客のため、一般消費者のために少しでも安く今までと変わらないものをと考えて作った発泡酒・第3のビールは国の税金負担に対する無言の抵抗といったところだろう。
日本のビールは歴史的にウイスキーと同じ道を辿ってきている。現代日本は王政でもなければ貴族がいるわけでもない。民主主義国家として、しっかりと国を作る主権は国民にあるし、投票もできるし言論の自由も保証されている。真っ向から国を始めとした権力を持つ人たちに対抗する事ができるし、求められている。
ただウイスキーができた時代から、何も真正面から対抗するばかりが正しいわけではないということを教えてくれる。もちろん今は投票をするなどの権利行使がなければ、民主主義として成り立たない。しかしそれだけでも足りないのではなかろうか。
こういった歴史的な抵抗の仕方も、我々の生活を豊かにするイノベーションを生み出す参考にもなるのではなかろうか。