この人使ってないでしょ。すでに日本の番組もたくさん出てるのに。何も事実関係知らないし取材もしようともしてないでなんとなくの推測だけで書いてる。ひどい記事。アゴラとしてこんな記事を載せていいの? https://t.co/4CQEaWufof
— 境 治 (@sakaiosamu) 2017年5月24日
アゴラに書いた記事でメディアの専門家?の方からご批判を頂いた。推測に基づくことを書くのはフェイクニュースの例もありデマ拡散につながるから止めておいたほうがいいというものだ。
私の個人ブログにしてもそうだし、アゴラにしても確かにえらくアクセスを集める形になってしまったので、まぁ影響力はあったんだなと感じる。とは言え、推測で書くのは禁止、とされてしまうとインターネットの言論空間が狭苦しくなってしまう。
もちろんデマはいけないが、状況から見た推測記事を書くことは新聞でもテレビでもネットでも、止めるべきじゃないと思う。もし間違いというのであれば、それは言論で反論するのが筋かと思う。もちろん推測が間違いという証拠をつけて。
経営者は利益を出すのが仕事です
さて、今回の私がどうしてこのような推測を行ったか?という点について、少し解説しておこうと思う。もちろん根も葉もない部分から事実を作り上げたわけではなく、huluのプレスリリースや社長のインタビュー、その他公式発表から推測したものだ。
主に私の推測している点は下記の二つだ。
- システムリニューアルは赤字の解消を狙っている
- システムリニューアルは独自コンテンツ配信のために行った
まず一つ目の赤字の解消についてだが、そもそも会社経営者は事業で利益を出すことが仕事だ。そしてhuluの日本法人は日本テレビが買収してからもずっと赤字が続いている。この赤字をなんとかしなければならないのは明白だ。
で、システムリニューアルをすればなぜ赤字を解消できる可能性があるのか?といえば、システムを自前で持つと損益分岐点を落とすことができるからだ。おそらくアメリカ本社のフールーシステムとドメインを使うことによって料金を支払っていたのだが、それがなくなる。
システムを最初に作ると大きな出費が必要になるが、それは一時的なものなので、システム開発が終われば後は保守費用だけになり、だいぶ安く収めることができる。それこそ何億・何十億円と払っていたであろうお金を払わなくなるのだから、初年度は赤字が継続したとしても、当然赤字解消に傾くのは間違いない。
利用者が増えているのに赤字
そしてこの赤字解消を目指す事自体、なんら問題ないし、経営者として当然の方向だ。huluが日本テレビに買収されてから、およそ90万人もの会員が増えている。月額933円のサービスなので、90万人増えるということは単純計算して、約8億4千万円の売上増になっている。
で、現在は155万人会員がいるので、月額だいたい14億5千万円の売上が見込める。これが12ヶ月分で173億円だ(最新の年間売上高は163億円)。そこからコンテンツを購入したり、システム利用料として支払ったりするコストが上回っているために、赤字経営なのだ。
おそらく削れるであろう大きな出費は、コンテンツの購入の部分とシステム利用料の2つだけだと思うので、システムを独自に作って赤字解消に動いたと言う推測ができるわけだ。
独自コンテンツを配信したいという推測
もう一つの独自コンテンツを配信したいという推測についてだが、こちらも間違っていると思っていない。なぜなら6月2日にDragon Ashのライブ配信を行うそうだ。これ、実は今まではPCでしか見れなかったようだが、独自システムにすることでタブレットやスマートフォンでも対応することができるそうだ。
アメリカ本社のシステムを使っていたとしたら、このライブ配信のために新しくシステムを作ってもらうようにお願いする必要があった。そうなるとコストがかかるし、さらにランニングでずっと利用料も払わないといけないので、コストがかさんでしまう。
こういったライブ配信などの独自コンテンツを出したかった、だからシステムを独自のものにしたというのは間違っていないと思うし、何よりも社長がそもそもインタビューで言っている。
もちろんそれ以外にも著作権保護の話もしており、どちらかと言うと今回のシステムリニューアルで混乱の元になっているのは、こちらの著作権保護に関しての部分だといえるだろう。
システムリニューアルがコケても解約を増やさない方法はあった
とまぁ私の推測は基本的に間違っていないと今でも思うのだが、あくまでこれは経営論・財務論からみた話しなので、メディア論からみたらまた別の理由があるということなのだろう。その点は専門家におまかせするとしよう。
最後に今回のシステムリニューアルだが「ほんとにユーザーのことを考えていないんだな」と思った最大の理由はシステムを一気に変更した点だ。ある日突然、旧ドメインにアクセスできなくなり、アプリも使えなくなり新しいシステムに移行した。これがいけなかった。
もし旧ドメイン・旧システムを2ヶ月ほど置いておけば、新システムに馴染めない人や新システムでの不具合を調整することだってできた。私もhuluを解約することなく、旧システムでずっと見続けていただろう。新システムが安定したらそちらに移っていたと思う。
Googleでもこういったことは当たり前のように行っていて、新しいデザイン・UIやシステムに代わるときには旧システムも並行して使えるようにしてある。もちろんそれは数ヶ月だけではあるが、ユーザーのことを考えれば、当然のことだ。なによりシステム開発者や企業の担当者も安心して新システム移行に取り組めるのも大きい。
しかしhulu日本法人はそれをしなかった。たった2ヶ月3ヶ月だけでもいいので、契約延長をしておけば、こんなことにはならなかったはずだ。交渉して断られたのかもしれないが、それならなおさらユーザーのためにもっと早く開発を急ぐか、リニューアルを遅らせる必要もあっただろう。
私はもうhuluをやめてしまったが、新システムと旧システムを併用させる、これだけのことがあれば、やめなかったのに…と思う。そう考えると、たった2ヶ月でも契約延長するコストをケチったんじゃないか?と推測するのも、致し方ないんじゃないだろうか。